都心部のマンションを中心に不動産価格が値上がりしています。
コロナ渦でさまざまな予測が飛び交いましたが、実際のところはどうなっているのでしょうか。

また売り手市場の現在、買主が価格交渉できる不動産はどのような不動産でしょうか。
物件購入後の維持管理を含めて、幅広い観点でらくだ不動産執行役員の山本が交渉のコツをご紹介します!

 

最近の不動産市況

 

コロナ渦の特徴

2020年春からのコロナ渦の中、低金利の追い風を受けて住宅需要は旺盛です。密を避けるため、郊外や地方へ移転する動きが起こるなどの予測は外れ、都心や勤務地に近く利便性が優れた立地へのニーズは依然として高い状況です。

当初は買い替え需要が弱いため売り物件が少ない状況でしたが、昨年の後半頃から売り物件が徐々に出回り在庫も増え始めました。しかし、取引件数はほぼ横ばいのなかで、高額物件の取引が多いため、依然として価格の上昇傾向は続いています。

そして、ここに来て在庫の増加が一服して、再び売り手市場の様相が見え始めました。その要因の一つに、価格上昇で売却意向は強まったものの、期待したほど成約に繋がらないため、買主が売却を見直す動きが出始めているとが考えられます。

不動産仲介の現場では価格査定の段階で高い価格を提示され、その価格で売れなければ売却を取り止めるケースが増えています。このような場合、売主の売却理由はあまり明確でなく、「高く売れるなら売ろう」といった意向が推察されます。

今後の予測

背景には、日銀の低金利政策による住宅ローンの借りやすさや、住宅の買いやすさがあります。主要先進国がインフレ抑制のため金融引き締めにシフトする中、日本は固定金利が僅かに上昇したものの、変動金利は依然として低水準のままです。

低金利政策がいつまで続くかは、今後の日銀の金融政策に拠るところが大です。黒田総裁の任期は2023年の春までですが、その後に政策転換があるのか、あるいは、それまでに何らかの変化の兆しが現れるかもしれません。

仮に、日銀がスタンスを変更して段階的に金利を引き上げるというアナウンスがあれば、株価が上昇しそれは不動産価格にも影響します。また、金融市場が独自に利上げを見込んだ動きを示せば、不動産市況も変化する可能性があります。

しかし、金利動向を中長期的に予測することは不可能です、その時々の空気に左右されることもあります。現在の日本は、上昇基調でも下降局面でもありません。つまり、金利がどちらに転んでもおかしくない状況にあると言えます。

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価格交渉の余地がある不動産

 

ランドマークや人気アドレス以外

現在は、売り物件が少ないため成約しにくい状況が続いています。申し込みをしても受付けて貰えないとか(いわゆる売主側の不動産業者による囲い込み)、一つの物件に3~4社の不動産会社からの申し込みが重なることも珍しくありません。

また、売れやすい物件と売れにくい物件に二極化が進み、ランドマーク的なマンションや人気エリアの物件の価格交渉は容易ではありません。一方で、近隣に価格水準が類似するマンションや戸建住宅が多いエリアでは価格交渉の余地があります。

これまで不動産会社は、売り希望価格で成約を目指すスタンスでした。ところが、ここに来て売主の目線を下げて貰うために、価格を入れた申し込みであれば相談に応じるケースが増えています。

最低敷地面積がある地域

エリアの標準的な土地の面積に比べ広い土地は、一般的に需要が減少するため価格交渉がし易くなります。一方、都市計画で最低敷地面積が決められている地域は注意が必要です。最低敷地面積と実際の土地面積の差によって影響が異なります。

例えば、最低敷地面積100㎡の地域で190㎡の土地がある場合、現状では広すぎる一方で、分割すれば最低敷地面積を下回ってしまいます。そのため開発業者等の需要が減退することで、交渉の余地が生まれてくることがあります。

修繕積立金の値上げを予定しているマンション

現在、コロナ渦で延期されたマンションの大規模修繕工事が再開しています。資金不足が将来見込まれ、修繕積立金の値上げの決定をしているマンションもありますが、ランニングコストが上昇する理由で買主はネガティブに受け取りがちです。

しかし、例えば「月額5千円の値上げは35年ローンの返済期間に換算すると約200万円の負担増」というロジックを値下げ交渉に使うこともできます。また、修繕積立金が不足する不安がなくなると考えれば、ポジティブに捉えることができます。

購入価格や月々の支払いは真剣に検討するのに比べ、修繕費等の維持管理に係るコストを考慮していない買主は少なくありません。将来発生が見込まれる修繕費等の見極めを誤れば、価格交渉時の値下げ分は一遍に吹き飛んでしまいます。

繕積立金を値上げすることは区分所有者の合意形成が図れたことであり、管理への関心が高いマンションだと言えます。そして、以上のようなことが説明できるエージェントはマンション管理に詳しく、安心して相談ができます。

売却の事情と購入時期

相続や離婚に伴う売却など売り急ぎの場合は、価格交渉を有利に進められることが多いので、エージェントに売却理由を聞くのも手です。また、謄本の権利部乙区に借入金の記載があれば、ローン残高を逆算し売却希望価格の目安を推測できます。

 

次に、取引が少ない夏場や年末は買手には有利な時期です。人気物件の多くは市場に出して1か月程度で成約することが多いため、2か月以上経過したような物件は狙い目です。気になる物件で1か月以上売れていなければ、価格交渉をお勧めします。

お互いにとって良い取引とは

不動産取引とは勝ち負けを決めることではありません。大切なことは、双方に一番良い条件は何かをイメージすることです。売主は、少しでも早く、高く売りたい気持ちと同時に、価値観が合い、後で揉めない相手へ売りたいとの思いもあります。

 

そのため、価格交渉の申込みの際は、値引きをして欲しい理由(例えば、修繕費にいくら必要だから等)や買い希望価格を決めた理由などを書いた手紙を添えることも一つの方法です。そして居住中の物件の内見には手土産を忘れないで下さい。

 

まとめ

 

以上をまとめると次のことが言えます。

・現在の不動産市況は、全体的には在庫不足のなかで売り手市場が続いており、最大の要因は日銀の低金利政策による住宅ローンの借りやすさにあります。そのため、来春の日銀総裁の交代で潮目が変わるかどうかが今後の焦点です。

 

・人気エリアにある物件などの価格交渉は難しいものの、市場に長期滞留していたり、売り急ぎの事情があったり、修繕積立金の値上げを予定がある物件などは、価格交渉の余地があります。

 

・どの会社かより、どのエージェントを選び信頼関係を構築できるかが重要です。エージェントによって経験値や知識のレベル、営業手法などが異なるため、エージェントを選びが結果を左右します。そして、建物の維持管理についてもアドバイスできるエージェントを選び、インスペクションを行って建物の状態を知ることで、更に安心を得られます。

 

全ての点で完璧なタイミングで購入できることなどありません。金利動向などの外部要因はあくまでも一つの指標に過ぎなく、買主が一番良いとご自身で納得できるタイミングを優先することをお勧めします。

 

是非、あなたが納得できる価格とタイミングで購入してみては如何でしょうか。

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