こんにちは。らくだ不動産です。
不動産仲介という業界には、大きな問題があると私は感じています。営利(利益を得ること、金もうけ)目的が強すぎるという問題です。これは、不動産仲介という職種が『不動産“営業”マン』と呼ばれていることにも表れています。仲介は、一般的に“営業職(売り込む仕事)”として見られています。
日本では、顧客が店頭やネットでみつけた物件を仲介会社に問い合わせ、営業マンが案内して、顧客が気に入ったら物件を購入するスタイルが主流です。一方アメリカでは、専属の仲介エージェントが顧客の要望整理・助言や条件交渉を行い、顧客の利益を最大化させることを目的に働くスタイルが主流です(当然に、同じエージェントが毎回物件を案内することになります)。
前者の日本式スタイルでは、顧客が営業マンを内見立会人(売主との日程調整役、鍵を開ける人)程度にしか捉えていません。その物件の内見後に、他物件の案内も同じ営業マンを専属的に指名するという行動は起きないのです。
不動産仲介は、売買契約が成立して初めて、仲介手数料という形で顧客から報酬を受け取ることができる仕事です。不動産営業マンと顧客の出会いが期一会であれば、その機会を逃すまいと、不動産営業マンは『売買契約を成立させること(その物件を売ること)』を目的として仕事をせざるを得なくなります。当然に、「今の家族構成だと、この物件は合わないと思いますよ」「この物件を買うのに必要な住宅ローンを借りると、家計が苦しくなるかもしれないですね」「修繕積立金が10年で1万円値上がりする計画になっていますが、問題ないですか?」というような、中長期的な目線を持って、顧客の一生に配慮したアドバイスを行うことはないでしょう。
アメリカ式のスタイルであれば、その時に案内した物件を顧客が買わなくても、次に案内した物件を買ってもらえれば報酬を受け取ることができますので、顧客の信頼を得ることに注力した方が合理的です。顧客に満足してもらえれば、売却時に再度依頼してもらえたり、別の顧客を紹介してもらえたりします。『顧客の信頼を得ること。顧客を満足させること』を目的として仕事をした方が、中長期的に自分の利益(仕事の達成感・収入)を高めることにつながります。
仲介エージェントが持つべき“2つの視点”
当社はアメリカ式のエージェント型仲介を採用しており、顧客と当社の関係は常に継続的です。建築(リノベーション)・マンション管理・ファイナンシャルプランニングといった知識の提供により顧客からの信頼を得て、物件の内見を専属的に任せていただいています。当社は物件ごとにフラットな意見・アドバイスを述べ、顧客は納得・安心できる物件を比較検討しながら見つけることができます。その報酬として、当社は仲介手数料をいただいています。
エージェント型仲介を実践する中で、私は顧客の利益を最大化し、将来も後悔が生じない取引を成立させるためには、2つの視点を仲介エージェントは持つべきだと考えるようになりました。
【視点1】顧客と同じ目的を、仲介エージェントが持つこと
【視点2】顧客と対等の関係を、仲介エージェントが築くこと
顧客の目的とは、買主であれば一般に『無理のない予算の範囲で、将来も資産価値を維持できて、住み心地の良い物件を、損せずに買いたい』だと思います。売主であれば一般に『より高い価格で、よりリスクを負わずに売りたい(買主は誰でも構わない)』でしょう(ひと昔前まで、囲い込みという慣習が半ば常識的に行われていました。今でも完全にはなくなっていません)。
仲介エージェントは、顧客の目的を整理・把握し、その目的の達成を自らの目的として、仲介サービスを提供するべきなのです。売買契約を成立させること(仲介手数料を受け取ること)を一番の目的としてしまっては、顧客の目的を達成することは難しくなります。
さらに、顧客と対等の立場を築くこと、すなわち顧客に信頼されることも必要です。顧客(特に買主)は、売買契約の直前に大きな不安を覚えます。信頼関係のない不動産営業マンには質問しづらく、説明を完全に信頼することもできないため、冷静に意思決定することが難しくなります。
競争力の高い不動産であれば情報を握る仲介会社の立場が強くなり、競争力の低い不動産であれば顧客の立場が強くなる傾向がみられますが、正しい姿とは言えません。相互に信頼している状態で、顧客は率直な要望を伝えられ、エージェントは率直な意見・アドバイスを述べられる関係性が健全です。
「営業マンから“購入意思のある人が別にいる。今すぐ買わないと売れてしまいますよ”と言われたから、よく考えずに買ってしまった」と後悔する買主も少なくありません(よくある営業トークで、本当にいるかどうかは別でしょう)。